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vol.307 「日本でいちばん大切にしたい会社/社労士通信」 2010.08.26
「日本でいちばん大切にしたい会社」
~長期にわたり好業績を持続している企業や、真に世のため人のためになる経営に懸命に取り組んでいる価値ある企業を、訪問調査して紹介をしている本より1社を要約して紹介。~

「社労士通信」
~情報通1.労使トラブル増加で「労働審判」申立件数が過去最高に~
~情報通2.企業に求められる「受動喫煙防止」の取組み~
~労働・社会保険Q&A.割増賃金の算定基礎から除外される賃金について~
「日本でいちばん大切にしたい会社」  (あさ出版 坂本光司著より)
 
 
この本は、著者は法政大学の教授ですが、長期にわたり好業績を持続している企業や、真に世のため人のためになる経営に懸命に取り組んでいる価値ある企業を、6000社以上訪問調査して、5社を選んで紹介をしているものです。50万部を超えるベストセラーとなっています。たいへん感動させられました。そのうち1社だけ要約して紹介したいと思います。

「社員の幸せのための経営」「戦わない経営」を貫き、48年間増収増益―伊那食品工業株式会社

創業以来48年間増収増益はまさに奇跡です。しかも業種は斜陽産業の寒天製造です。寒天の市場は全体として右肩下がりですが、同社は寒天を使いながら原材料比率を少なくして、時代に合った付加価値をどんどん付けながら、数字を伸ばしています。この会社の成長の秘訣は一つに経営理念にあると思います。
「いい会社をつくりましょう」がこの会社の社是です。「いい会社とは、単に経営上の数字ではなく、会社を取り巻くすべてに人々が『いい会社だね』と言ってく ださる会社」「社員自身が会社に所属することの幸せをかみしめられるような会社のこと」とあります。この会社は創業以来一度も、リストラを行ったことがありま せん。塚越会長は「小社はこれまでも、またこれからも社員のリストラはやりません。なぜなら小社にとって、人件費はコストではないからです。人件費は目的であ る社員の幸福を実現するための生活費だからです。」と言います。同社の経営理念は「企業は社員の幸せを通して社会に貢献すること」と高らかに謳っています。さらにそれを補足する言葉として、「企業は企業のためにあるのではなくして、企業で働く社員の幸せのためにある」と書いてあります。伊那食品工業が伸びてきたのは、この社是と経営理念をベースにした経営を、ブレることなく続けてきた結果と言えるのです。

このような経営理念に基づいて3つの経営方針があります。

1つは「無理な成長は追わない」ということ
これは、景気を追わない、流行を追わない、ということです。景気を追っていると、好況の時には設備投資などにお金をかけてしまいがちです。しかし不況になる とそれが過剰投資ということになり、そのあおりを食ってリストラをしたり、商品の値段を下げたりして苦しむのです。地味ながら着実なこの経営を、「盆栽経営」 や「年輪経営」と言われますが、無理な成長を追わないことで、みごとに着実な成長を達成しているのです。

2つは「敵をつくらない」です。
代表的なのは同業者ですが、同業者は仲間でもありますが、現実には見積もりなどで熾烈な競争をしなければなりません。自分の会社の繁栄の陰で泣いている企業や人がたくさんいるということがあります。いい会社であるためには同業者と喧嘩をしないということです。喧嘩をしないということは見積りをしないということで す。それは、オンリーワンを目指すということです。この世になかった商品、他社ではできない商品、しかも、お客のニーズとウオンツのある商品をつくり続ければ 敵をつくらなくていいわけです。もう1つ、敵になりがちな存在は、いわゆる下請け企業です。発注者、親会社の傲慢なやり方は嫌というほど見てきています。「仕 事を回してやっている」という立場を利用して、下請け企業に無理な注文をする例がたくさんあります。努力をしているのに適正利益を出していない会社には、「こ の単価では無理ではないですか」といって、逆に単価を上げてあげる。あるいは、収益が出るようにアドバイスをしてあげる。すると下請け企業も「あの会社はいい 会社だ。あの会社のためならがんばれるぞ」ということになります。

3つは「成長の種まきを怠らない」です。
これは、研究開発と未来経費のことです。伊那食品工業は、未来に対しての種まきを一生懸命やり、しかも、継続的に水や肥しを与えているのです。塚本会長は「 成長するのも利益を上げるのも、会社を継続させるためです。なぜ継続させるかといえば、社員を幸せにするためです」と言いきります。業績を追い求めるのではなく、継続させたいという思いが、お客様や社員の心を打ち、それが結果的に業績に結び付いているのです。

この会社は社員満足度もお客様の満足度もさらに、地域満足度もとてつもなく高いのです。現在この会社の本社は、3万坪の敷地があります。敷地内には赤松などの木々や四季折々の花々が咲き誇り、そんなところに忽然と建物が立っています。そして、塀も門もありません。誰でもいつでも入ることができます。保育園の子供たちが敷地内の小高い丘で弁当箱を広げて食べていたりしています。会社の敷地の中に通学路もあります。また、レストランも2つあって社員が運営しています。一般の人も利用できるようになっているのです。
この会社は8時20分に始業ですが、社員の多くは8時前に出社します。社長も課長も同じです。会社の内と外を掃除するためなのです。会社からはるか離れた道路や溝の中、マンホールの中まで、徹底的に掃除するそうです。また、従業員のほとんどは車で出勤しますが、社員は「右折禁止」となっています。社員が会社に入るときに右折をすると、後続車や対向車を止めてしまうからです。地域社会に対して迷惑をかけないための配慮です。

伊那市民の誇りであり、日本が誇りにしたい会社、伊那食品工業の塚越会長が掲げた理念は、これからも綿々と受け継がれていくことでしょう、と結ばれています。
 
 
 
 
(文責) 公認会計士   魚住 正治
 
 
 
「社労士通信」 
 
 
「情報通1」 ~労使トラブル増加で「労働審判」申立件数が過去最高に~
 
 
最高裁判所が2009年における労働審判の申立件数を公表し、3,468件で過去最高となったことがわかりました。労働審判制度は2006年4月にスタートしましたが、4年で約4倍の伸びとなっています。
内容別の内訳では、「解雇等の地位確認」に関する申立てが1,701件、「賃金・手当」に関する申立てが1,059件、「退職金」に関する申立てが205件などとなっています。
申立ての多くは労働者や退職者からのものですが、その背景には、不況下における雇用調整の実施、賃金の引下げなどに伴う労使トラブルの増加が挙げられます。
 
 
 
 
「情報通2」 ~企業に求められる「受動喫煙防止」の取組み~
 
 
厚生労働省は、労働安全衛生法を改正して、職場における受動喫煙対策を義務付ける方針を明らかにしました。 法律を改正してまで受動喫煙対策に取り組もうとする強い意欲が伺えますが、改正法が成立すれば、飲食店や商業施設等には大きな影響を与えることになりそうです。
主な内容としては、事務所・工場等は原則として禁煙とすること、喫煙室の設置は認めること、飲食店・商業施設等で接客を行う従業員の受動喫煙を防止するために、室内のたばこの煙に含まれる有害物質の空気中濃度を一定基準以下に抑えるように義務付けることなどです。
この濃度規制が導入された場合、全面禁煙とするか、喫煙室を設けるか、強力な換気施設を設けるか等の選択を迫られることになります。
改正案は、来年の通常国会に提出される模様ですが、多くの企業に影響を与え、負担を強いることになるため、今後の動向が気になるところです。
 
 
 
 
「労働・社会保険 Q&A」 ~割増賃金の算定基礎から除外される賃金について~
 
 
≪相談内容≫
 
このたび従業員の業務評価制度や給与の支給基準を見直しすることにしました。今回、職能給に関しては2ヶ月に1度評価を行い、その結果を給与に反映させようと考えています。この職能給は、時間外などの割増賃金の算定の基礎に算入しなければなりませんか?
 
≪回答≫
 
まず、時間外、休日、深夜労働に対する割増賃金の算定方法については、労働基準法第37条第4項、労働基準法施行規則第21条に規定されています。 割増賃金算定の基礎から除外できる賃金は、「家族手当」、「通勤手当」、「別居手当」、「子女教育手当」、「住宅手当」、「臨時に支払われた賃金」、「1ヵ月 を超える期間ごとに支払われる賃金」の7項目です。なお、この賃金は、限定列挙されたもの(これらに該当しない手当や賃金は全て算定の基礎に含める必要があります)であり、名称にかかわらず実質によって取り扱うこと(昭22. 9.13 発基第17号) とされています。
つまり、通常毎月支払われる職能手当は、原則、割増賃金等の算定基礎に含めなければなりません。
一方、ご質問のケースの場合、職能給が「1ヵ月を超える期間ごとに支払われる賃金」に入るのかどうかによります。労働基準法施行規則第8条により具体的な例示があり、それによると賞与、1ヵ月を超える期間の出勤成績によって支払われる精勤手当、1ヵ月を超える一定期間の継続勤務に対して支給される勤務手当、1ヵ月を超える期間にわたる事由によって算定される奨励加給または能率手当の4種類の賃金、手当とされています。これらの手当(賃金)は、1ヵ月以内の期間で、支給額の算定基礎となるべき労働者の勤務成績等を判定するのには短期間過ぎる、ということもあり、賃金の毎月払いの原則を適用しないこととされています。つまり、支払われる手当が、1ヵ月の期間では算定できないという合理的な根拠が必要ということになります。
したがって、単に割増賃金の除外賃金とすることを目的として1ヵ月を超える期間ごとに支払うとする取扱いは難しいと考えられますが、御社の支払われる職能給は、2ヵ月ごとに評価をし、その評価をもとに業績報酬的に支払われるものであれば、上記の「1ヵ月を超える期間にわたる事由によって算定される奨励加給」に準ずるものとして、割増賃金の算定からは除外されると考えられるでしょう。
 
 
 
 
(文責) 社会保険労務士  大津 賢一郎
 
 
 
 
 
 

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