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vol.302 「発明の進歩性/未知への挑戦」 2010.07.15
「発明の進歩性」
~平成21年に、発明の進歩性に関して知財高裁が新たな判断基準を示しました。~

「未知への挑戦」
~2010年6月13日22時51分頃、小惑星探査機「はやぶさ」は大気圏に突入し地球に帰還しました。~
「発明の進歩性」  (知財高判平成21.1.28、平成20年(行ケ)第10096号)
 
 
 特許出願をした発明に特許が認められるためには、特許要件として進歩性が要求されます。進歩性があるとは、出願発明が先行技術に基づいて容易に創作することができないこと、つまり先行技術から容易に想到し得ないことをいいます。
 平成21年に、発明の進歩性に関して知財高裁(;知的財産高等裁判所)が新たな判断基準を示しました。この判決は、発明の進歩性を否定するためには、先行技術に出願発明の特徴点に到達するためにしたはずであるという示唆等が必要であると判示しています。
 以下に紹介します。   
 
 
1.事件の経緯
 
平成 7年5月16日特許出願
平成17年5月27日特許庁により特許出願に対する拒絶査定
平成17年7月 4日拒絶査定不服審判の請求
平成20年1月29日特許庁により拒絶審決
平成21年1月28日知財高裁により拒絶審決の取り消し判決
 
 
 
2.出願発明(請求項1)
 
下記(1)~(3)の成分を必須とする接着剤組成物と、含有量が接着剤組成物100体積に対して、0.1~10体積%である導電性粒子よりなる、形状がフィルム状である回路用接続部材。
(1) ビスフェノールF型フェノキシ樹脂
(2) ビスフェノール型エポキシ樹脂
(3) 潜在性硬化剤
 
 
 
3.先行技術
 
下記(1)~(4)の成分を必須とする接着剤組成物と、含有量が接着剤組成物100体積に対して、0~30体積%である導電粒子よりなる、形状がフィルム状である接着フィルム。
(1) アクリル樹脂
(2) フェノキシ樹脂
(3) ビスフェノール型エポキシ樹脂
(4) 潜在性硬化剤
 
 
 
4.裁判上の争点
 
出願発明が、接着剤組成物の必須成分として「ビスフェノールF型フェノキシ樹脂」を含むのに対し、先行技術は、「フェノキシ樹脂」(ビスフェノールA型フェノキシ樹脂)を含むが、出願発明は先行技術からみて進歩性を有するか?
 
 
 
5.知財高裁の判断(概要)
 
 発明の進歩性、すなわち、当業者が、先行技術に基づいて出願発明を容易に想到することができたか否かは、先行技術から出発して、出願発明の先行技術に対する特徴点(先行技術と相違する構成)に到達することが容易であったか否かを基準として判断される。ところで、出願発明の特徴点(先行技術と相違する構成)は、出願発明が目的とした課題を解決するためのものであるから、容易想到性の有無を客観的に判断 するためには、出願発明の特徴点を的確に把握すること、すなわち、出願発明が目的とする課題を的確に把握することが必要不可欠である。そして、容易想到性の判断の過程においては、事後分析的かつ非論理的思考は排除されなければならないが、そのためには、出願発明が目的とする「課題」の把握に当たって、その中に無意識的に「解決手段」ないし「解決結果」の要素が入り込むことがないよう留意することが必要となる。
 さらに、出願発明が容易想到であると判断するためには、先行技術の検討に当たっても、出願発明の特徴点に到達できる試みをしたであろうという推測が成り立つのみでは十分ではなく、出願発明の特徴点に到達するためにしたはずであるという示唆等が先行技術に存在することが必要であるというべきである。
 出願発明においてビスフェノールF型フェノキシ樹脂を必須成分として用いるとの構成を採用したのは、ビスフェノールA型フェノキシ樹脂に比べて、接続信頼性及び補修性を向上させる課題を解決するためのものである。しかし、一般的に、ビスフェノールF型フェノキシ樹脂が、出願時に既に知られた樹脂であるとしても、それが回路用接続部材の接続信頼性や補修性を向上させることまで知られていたものと認めるに足りる証拠はない。
 先行技術には、格別、相溶性や接着性に問題があるとの記載はない上、回路用接続部材用の樹脂組成物を調製する際に検討すべき要素としては、耐熱性、絶縁性、剛性、粘度等の他の要素も存在するのであるから、相溶性及び接着性の更なる向上のみに着目してビスフェノールF型フェノキシ樹脂を用いることの示唆等が先行技術にあると認めることはできない。
 さらに、ビスフェノールF型フェノキシ樹脂は、ビスフェノールA型フェノキシ樹脂に比べて耐熱性が低いという問題があり、良好な耐熱性が求められる回路用接続部材に用いるフェノキシ樹脂として、格別の問題点が指摘されていないビスフェノールA型フェノキシ樹脂に代えて、耐熱性が劣るビスフェノールF型フェノキシ樹脂を用いることが、当業者にとって容易であったとはいえないと判示しています。
 
 
 
さらに詳細をお知りになりたい方は、ご連絡下さい。
 
 
 
 
 
 
 
(文責) 弁理士  川瀬 裕之
 
 
 
「未知への挑戦」
 
 
 2010年6月13日22時51分頃、小惑星探査機「はやぶさ」は大気圏に突入し地球に帰還しました。この探査機は2003年5月9日に打ち上げられ、小惑星に向かって出発しました。当初、探査機は「MUSES-C」と呼ばれ、その上、向かう小惑星も何回か変更を余儀なくされ、決定したのが大きさ330mの小惑星「1998SF36」でした。何とも味気ない名前の並ぶスタートでした。しかし、そのミッションから「はやぶさ」と命名されました。向かう小惑星も、アメリカの発見者に依頼して「イトカワ」と名付けてもらいました。

 2005年9月にイトカワに到着し、11月26日には降下着陸を行い、試料採取のためのタッチダウンに成功しました。その後のトラブルにより地球への帰還を3年延期することとなりましたが、7年間、60億㎞の旅を無事に終えて戻ってきました。

 ご存知の方も多いと思いますが、「イトカワ」は、日本のロケット開発の父・糸川英夫博士に因んだ名前です。糸川博士は、戦前は戦闘機「隼」の設計者として名をはせた有名な科学者でした。戦後、いち早く宇宙に目を向け、国家予算が付かない時から「ペンシルロケット」を独自に開発しました。ロケットの開発陣は、日本の科学の威信をかけて「ハヤブサ→イトカワ」を繋ぎ合わせました。この開発には、JAXAなどの公的機関と、余りクローズアップされていませんが、NECの研究チームが研究開発を分担しました。

 今回のプロジェクトの目的は、小惑星へのタッチダウンを成し遂げ、世界初の往復探査を完遂することでした。これは、太陽系の起源を探る研究であり、往復するための機器の実証実験でもあります。初めての技術のオンパレードでした。それにもまして、底流にあるのは、地球と小惑星との衝突をいかに回避するかの研究でもあります。

 6500万年前に、小惑星が地球に衝突し、恐竜を全滅させました。このイトカワも、1億年以内に太陽か、水星、金星、地球、火星のうちいずれかに衝突して消滅するだろうと考えられています。もし地球に衝突した場合、恐竜絶滅以上の被害を地球上の生態系にもたらし、人類文明を消滅させる危険性が懸念されているからです。

 イトカワで採取し、カプセルで持ち帰られた物の解析結果が楽しみです。科学者の探究心に敬意を表したいものです。最後に、この様な意味多い未知への探求と人類(特に子供)に夢を与える所作には、無定見な事業仕分けではなく、多くの予算を与えて頂きたいものである。そのために消費税を1%上げるのであれば、認めてくれる人も多いと思う。

詳細は http://www.isas.jaxa.jp/j/enterp/missions/hayabusa/today.shtml
 
 
 
 
 
 
 
 
 
(文責) ㈱経営改善センター   山本 正
 
 
 
 
 
 

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