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vol.275「戦略的思考について/会社に求められる労務管理(6)」2009.12.10
「戦略的思考について」
~「企業参謀」大前研一著 より~

「会社に求められる労務管理(6)」
 ~過労自殺の判例から~
「戦略的思考について」  ~「企業参謀」大前研一著 より~
 
 
 平成5年頃、この本を読んで、会計事務所の料金の設定について考えさせられました。

「企業参謀」から引用します。
 床屋の料金について、日本とアメリカの平均的作業の割り振りを比較した図表(省略)が示されている。『調髪料は1400円に対して3ドル(1ドル300円を想定)である。ところが、この作業内容を見てみると、日米で大きな差がある。日本の床屋は(バカ)丁寧である。この丁寧さも、古き良き時代に安価にやってくれたころには大いに歓迎したものだが、人件費がこうも高くなってくると、もう一度その内容を吟味したくもなる。

 さて、私の素人判断によると、50分の調髪時間の実に70%が自分でも家でできるひげそりや、自宅に戻ってひと風呂浴びれば消えてしまうものに使われている。この額は実に980円で、アメリカの(時間の割には高い?)床屋の225円に比べて約4倍になっている。・・・(中略)たとえばアメリカ式の20分床屋を1400円の40%である600円くらいで開業することであろう。すると、1日の1理髪師あたりの客数が、2.5倍になるだろう。・・・この方法で“収益”を上げようと思えば、600円の代わりに700円にすればおそらく充分であろう。これでやっと相場の半値である。』

 『「戦略的」と私が考えている思考の根底にあるのは、一見渾然一体となっていたり、常識というパッケージに包まれていたりする事象を分析し、ものの本質に基づいてバラバラにしたうえで、それぞれの持つ意味合いを自分にとって最も有利になるように組み立てたうえで、攻勢に転じるやり方である。』この考え方が1000円散髪のはしりになりました。

 私は、この考えにヒントを得て、会計事務所の顧問料について分析をしました。顧問料の中身は記帳処理や訪問指導、給与計算や年末調整、電話による質問、経営に関する相談など雑多な内容があります。しかしながら、顧客によって必要とするサービスの質と量は異なりますし、顧問料とサービスは対応していないことが判明しました。それならば業務の一つ一つに単価を付して、お客のニーズに応じて組み合わせて提供すれば、無駄なサービスをしなくてもよいし、顧客にとってもコストの節約になると思いました。そこで、顧問料を廃止するにいたったのです。

 売上に応じた基本料金と業務に応じた業務料金の合理的な料金体系ができました。一件当たりの年間料金が約50%になりました。顧客は5倍に増えました。

 これでめでたしめでたしというわけにはいきません。内外から猛烈な反発がありました。外は税理士会です。料金のダンピング、違法広告、仲間から顧客の争奪など税理士会の規則に反しているというのです。税理士会の規則はあくまで内規であり、法律ではありません。しかしながら、村八分のような扱いを受けました。現在では、規制緩和でまるで嘘のように自由です。

 内は、社内(会計法人をつくりました)です。担当者は2倍の顧客を担当して同じ給与というわけです。業務が合理化しているといっても、繁雑にはなりますし、増加することは間違いないでしょう。全員辞めると言い出しました。社内の業務の合理化が必要だったのです。徹底した分業化により、コストダウンを図りました。給与体系も出来高制を採用しました。その結果、社員の給与もアップすることができました。

 税理士業界は、戦国時代の様相を呈しています。コストダウン競争、顧客争奪戦です。税務の専門家としての価値は評価されないような、嘆かわしい状況です。私もその片棒を担いでしまいました。戦略的思考の先に戦国時代があるとは、大前さんも予測ができたのでしょうか。
 
 
 
 
 
 
 
(文責)公認会計士    魚住 正治  
 
 
 


 
 
「会社に求められる労務管理<6>」 ~過労自殺の判例から~
 
 
 
◇過労自殺についての最高裁判決
 
 若年労働者の過労自殺が社会問題となった、いわゆる【電通事件】の判決があります。20歳代の新入社員の過労自殺に対して、民事損害賠償請求が認められた事案で、常軌を逸したとされる長時間労働から精神障害を発症させたと判断されました。裁判所は、深夜に及ぶ時間外労働、徹夜など知っていながら、労働量を軽減するといった具体的な措置は取らなかった管理監督者である上司の責任とその使用者責任を認めています。

 この裁判によって、労働者の健康問題ついて使用者の責任が明確に定義されました。すなわち「労働者が労働日に長時間にわたり業務に従事する状況が継続するなどして疲労や心理的負荷等が過度に蓄積すると労働者の心身の健康を損なう危険のあるところは周知のところであり・・・・使用者は業務の遂行に伴う疲労や心理的負荷等が過度に蓄積して労働者の心身の健康を損なうことがないよう注意する義務を負うと解するのが相当である。」とし、労働基準法の労働時間の制限は労働者の健康管理のためにも必要であるとしています。

 この判決を受けて、平成11年「心理的負荷による精神疾患等に係る業務上外の判断指針について」という通達が当時の労働省から出されました。すなわち、労働者の精神障害を発症する過重な業務の基準が設けられました。使用者は時間外労働について、時間外協定(36協定)を締結して労働基準監督署に提出する、時間外労働に対して割増賃金を支払うだけでなく、労働者の健康を損なうような長時間の過重労働をさせてはならないと行政も指導しています。
 
 
 
 
◇今後の健康管理
 
 過労死・過労自殺にかかる労使認定基準の緩和が、民事上の損害賠償請求事件の増加を加速させているといわれています。これからは、健康診断の結果等に応じた労働環境の整備や業務の軽減など会社に対して具体的な方策が求められる時代になったといえるでしょう。

 定期健康診断は労働安全衛生法上の事業主の義務ですが、実施するだけでなく、その結果を踏まえた上で、基礎疾患のある労働者に対して恒常的な長時間労働を命じることは問題があります。また、管理監督者である上司は、部下のこころの状態についても把握しておかなければなりません。

 平成18年に労働安全衛生法が、改正施行され、医師による面接指導が定められました。週40時間を超えて労働させた場合の労働時間が月100時間を超え、かつ、疲労の蓄積が認められる労働者が申し出た場合には、医師による面接指導を行わなければなりません。人員不足から長時間労働になるのか、特定の労働者に過重負荷をかけているのか、長時間労働が恒常化する労働環境は、それ自体が多くの問題を抱えていると思われます。

労働時間管理は、使用者の義務である以上、労働者の健康管理を怠った場合、安全配慮義務違反を指摘される傾向はますます強くなっていくと考えられます。
 
 
 
 
(文責)社会保険労務士・行政書士  谷口 恵子  
 
 
 

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