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vol.271「会社に求められる労務管理(5)/インフルエンザ対策・BCPの必要性」2009.11.12
「会社に求められる労務管理(5)」
 ~過労死の判例から~

「インフルエンザ対策・BCPの必要性」
 ~企業の事業継続と一人一人の健康を守るためにも、出来る限り早めの対策が必要。最低限の対策について。~
会社に求められる労務管理 <5> ~過労死の判例から~
 
 
 会社の労務管理について、ここでお話してきました。使用者には労働者に対して、安全配慮の義務(労働者の生命および身体を危険から保護するよう配慮する義務)をもっています。求められる、その安全配慮義務も時代や雇用情勢とともに変化してきました。
 今回は過労死について、次回は過労自殺についての具体的な判例を紹介し、近年の傾向についてお話します。
 
 
○過労死・過労自殺
 
 過労死とは、特定の疾患をさすのではなく、過重な労働負荷によって脳出血やくも膜下出血などの脳血管疾患、狭心症や心筋梗塞などの虚血性心疾患等を急速に悪化させ死に至る、またはそれに近い重篤な疾病状態になることをいいます。また、過労自殺とは、過重労働や仕事上のストレスにより労働者が精神疾患を発症し、自殺を引き起こした場合をいいます。
 これまで、労災といえば、工場で作業中に怪我をした、工事現場から落下した等、いわゆる労災事故やじん肺などの職種な職業病として考えられていました。また、労災である、業務上であると認定されても使用者の民事損害賠償責任が問われるのは稀であると考えられていました。
 次に過労自殺ですが、労災保険法上、労働者が故意に死亡またはその直接の原因となった事故を生じさせたときは労災保険の給付は行わないとされています。これまで自殺については、業務災害であるという認定も難しいものであると捉えられていました。
 
 
○過労死についての最高裁判決
 
 過労死については、労災認定をめぐって平成12年に2つの最高裁判決が出されました。
 その一つが、業務外とした高裁判決を覆した【横浜南労基署長事件】です。支店長付きの運転手として自動車運転の業務を行っていた運転手の走行中のくも膜下失血について、業務起因性が認められた事例です。業務による過重な精神的・身体的負荷によってくも膜下失血の発生となる基礎疾患を持つ労働者が自然の経過を超えて、その症状を悪化させたと認められました。
 もう一つが【西宮労基署事件】で、これも大型観光バスの運転手の高血圧性脳出血について業務起因性が肯定されました。
 この二つの最高裁判決を受けて、行政は、平成13年に「脳血管疾患及び虚血性心疾患等の認定基準について」の通達を出し、過労死の新認定基準を示しました。この通達以降、労災補償認定件数の急激な増加がみられています。
 また、過労死では【システムコンサルタント事件】が事業主に対して民事損害賠償を求めた事案でした。コンピュータソフトウェア開発に従事していた従業員が脳幹部出血により死亡したことは、過重な労働による原因の過労死であるとして、使用者側の安全配慮義務違反が問われたものです。この事案でも、労働時間は年間3000時間にもおよぶほど過重労働で、さらに職責も高く高度な精神的緊張があったとされています。
 
 
○脳・心臓疾患の発症に影響を及ぼす過重労働
 
 通達の基準では、発症前の近接した時期における過重負荷のみならず、長期間(発症前6か月)について疲労の蓄積が考慮されます。業務の過重性の評価にあたっては、労働時間・勤務形態・作業環境・精神的緊張の状態等を把握し、特に過重な身体的・精神的負荷と認められるか客観的かつ総合的に判断されるとされています。 特に恒常的な長時間労働は、疲労を蓄積させ、過重性の評価のもっとも重要な要因であります。
 また、過労死に対する労災認定基準の緩和によって、民事上の損害賠償請求事件を増加させることになりました。今後もこういった事案は増加する傾向にあり、健康診断の結果に応じた業務の軽減や免除、労働環境の整備など会社側の対応は必要であると考えられます。
 
 
 
 
(文責)社会保険労務士・行政書士    谷口 恵子  
 
 
 
 
 
インフルエンザ対策・BCPの必要性
 
 
 暖かな日が続いているかと思っていたら、一気に冬将軍が到来してきました。乾燥が続き、いよいよ本格的なインフルエンザの季節を迎えます。今、全国的な対策が採られており、マスコミも異常な危機感を煽らないようにと、極力冷静な報道に努めています。だからといって、私たちの身近な危機が遠のいた訳ではありません。
 今、言われているインフルエンザは、話題の新型インフルエンザA(H1N1)と毎年発生する季節性のインフルエンザ(今回の予測ではH5N1)との2種が対象となっています。
 そして、発生状況を示す段階は、季節性はフェーズ3(人から人への感染は無いか、極めて限定的)で、新型は最高段階のフェーズ6(いわゆるパンデミック期:人から人への世界的流行。一般社会で急速に感染が拡大し、持続している)と示されています。年内にはほぼ確実に流行期を迎えますので、企業の事業継続と一人一人の健康を守るためにも、出来る限り早めの対策が必要です。最低限の対策を考えておきたいと思います。
 
 
中小企業としての着目点を以下に要約します。
 
1.会社としての対策
社内での手洗いや咳エチケットの励行と各家庭での励行
マスクの着用や濃厚感染対策としての2メートルルール(配置)
 
 
2.会社として、日頃から情報の収集と伝達
全国的な広がりと対策や会社のある近所や社員のご近所情報の交換
 
 
3.会社として社員の欠勤の判断をどのようにするのか
同居家族及びその周辺に発生があった場合やそれに順ずるケース
 
 
4.欠勤があった場合の業務の埋め合わせをどうするのか
特殊な技能・技術の担当者の欠勤に対する対応策
特に、会社の意思決定をする社長等が罹患した場合はどうするか
 
 
5.再出社の判断基準を示しておくこと
その際の2メートルルールが保持できるかどうか
 
 
6.材料や商品の仕入先が休業した場合の対策はどうか
 
 
7.お客様に対する対応方法を検討する
 
 
8.社内でのワクチン接種の推奨
 
 
9.ともかく全社で対策を検討する
 
 
 
以上の様な点を予め検討しておくことをお勧めします。それでは、具体的な例を紹介します。
 
1.複数の社員が関わる業務はチーム分けをして代替性を持たせる
 
2.職場における面談や業務実施時に人と人との距離を2メートル以上空ける
 
3.机と机の間に仕切り板と立てる
 
4.社内に最低の防止対策用品を備蓄する -マスク、体温計、消毒剤等々-
 
5.電車等の混雑時を避けて時差出勤をする(早出と遅出)
 
6.在宅作業を検討する
 
7.日常の業務に優先順位をつけて緊急時のプライオリティーを明示する
 
8.要員確保のために派遣会社と検討しておく
 
9.同業者間で対策を検討し、資材、人員、ネットワークを共有する
 
 
 
 この様に、様々な工夫が取られ始めています。企業が自ら対策を打たないと誰もサポートしてくれないのが実情ですし、信用の低下と被害は全て自分持ちということになります。その他、中小企業庁では、緊急時にも事業を継続すべき「社会機能の維持に関わる企業」と、逆に事業を自粛要請する企業を想定しています。
 つまり、医薬品、生活必需品、食料品、ライフラインに関わる事業などは継続を求められます。一方、集会施設、映画館、娯楽施設などに関連する事業は自粛を要請されることになります。自社の取引先にその様な企業が有るか無いかを調べておく必要もあります。
 
 
 
最後に、労務管理及び雇用面での留意点をQ&Aにしました。(再掲載)
 
 
 
新型インフルで欠勤中の賃金は?  労基法「休業手当」扱いでQ&A
 
 新型インフルエンザ感染はこれからが正念場。企業活動に影響を及ぼす可能性が現実味を帯びてきている。厚生労働省は9月末、欠勤中の休業手当の扱いで基本的なQ&Aを作成した。今後、保健所の要請等が変更される可能性もあるので注意が必要。
 
 
 
Q1.新型インフルに感染したため休業させたら、会社は労働基準法第26条に定める休業手当を支払う必要があるか。
 
A.一般的には「使用者の責に帰すべき事由による休業」に該当しないとされ、休業手当を支払う必要はない。しかし、医師や保健所による指導や協力要請の範囲を超えて(外出自粛期間経過後など)休業させる場合には、休業手当を支払う必要がある。
 
 
 
Q2.社員に発熱などの症状があるため休業させる場合は、会社は支払う必要があるか。
 
A.新型インフルかどうかの確認前に、発熱で自主的に休む場合は、通常の病欠と同様の取り扱いでよい。熱が37度以上など一定の症状があり一律に社員を休ませる場合、使用者の自主的な判断だから休業手当を支払う必要がある。
 
 
 
Q3.感染者の近くで仕事をしている濃厚接触者の休業はどうか。
 
A.保健所による協力要請等による場合は一般的には該当しない。社員の家族に感染者が出て休業させる場合も同じ。
 
 
 
Q4.感染の疑いのある社員を、一律に年次有給休暇の取得扱いとするのは違反か。
 
A.原則として使用者が一方的に取得させることはできない。病気休暇扱いは就業規則等に準拠する。
 
 
 
(文責)株式会社 経営改善センター   山本 正   
 
 
 
 
 
 
 

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