「商標権の侵害とならない場合(その7)」
先使用権が存在する場合
「シリーズ建設(1)」
~建設業とは~

商標権の侵害とならない場合(その7) ~先使用権が存在する場合~
1.はじめに
商標権は独占排他権であるため、第三者が登録商標をその指定商品等に使用すると、商標
権の侵害となるのが原則です。
しかし、未登録商標であっても商標の使用により周知となった商標には、商標使用者の業務上の信用が蓄積しているため、このような信用を既得権として保護する必要があります。また、未登録周知商標については、その商標を使用している者以外には商標登録が認められませんが、過誤登録された場合に登録無効審判を請求するまでもなく、未登録商標の使用を認める必要があります。特に登録無効審判請求の除斥期間経過後に未登録周知商標の使用を確保する必要があります。
そこで、未登録周知商標の使用を確保するため、先使用権が認められ、先使用権を有する第三者は登録商標をその指定商品等に使用することができるため、商標権の侵害とはなりません。
2.先使用権の発生要件(商標法32条)
(1)商標権者の商標登録出願の前から日本国内で登録商標と同一又は類似の商標を使用していることが必要です。従って、外国でのみ使用している場合には先使用権は認められません。
(2)不正競争の目的でなく商標を使用していることが必要です。従って、他人の信用を利用して不当な利益を得る目的で使用している場合には先使用権は認められません。
(3)商標登録出願の際に使用商標が周知化していることが必要です。使用商標が、自分の商品等を表示する商標として需要者の間に広く認識されている場合に、商標使用者の業務上の信用を既得権として保護する趣旨です。需要者の間に広く認識されているかどうかは、使用期間や使用方法等の取引の実情を考慮して総合的に判断されますが、必ずしも全国的に広く認識されている必要はありません。
(4)商標登録出願前から商標を継続して使用している必要があります。使用していなければ保護すべき業務上の信用が消失するからです。
(5)先使用者から業務を承継した場合には、承継人にも先使用権が認められます。
3.先使用権が認められた事例と認められなかった事例
(1)「ゼルダ事件」
(東京高裁 平成5年7月22日 知財集25-2-296 判例集177頁)
商標登録出願前9か月の間に百貨店等を通じ約2億円の売上があり、婦人服バイヤー等の間に知られている点で周知性が認められました。また、権利者からの警告により、取引先に迷惑がかかるのを回避するために使用を一時中止しても、使用の継続性が認められました。
(2)「制糖茶事件」(東京高裁 昭和62年9月29日 無体集19-3-371)
商標登録出願日である昭和45年10月20日前の昭和45年3月頃に制糖茶の販売を始め、パンフレットを配布し、出願時までに毎月100個程度の注文を受けていた程度では、需要者の間に広く認識されていたとは認められないとして、周知性が否定されました。
さらに詳細をお知りになりたい方は、ご連絡下さい。
(文責)弁理士 川瀬 裕之
シリーズ建設(1) ~建設業とは~
このメールマガジンで建設業許可を中心に何度か取り上げてきました。今回から建設業について、許可だけでなく色々の方向からお話していきたいと思っております。今回は、そもそも建設業とは何なのか、建設業の歴史についてお話します。
1、そもそも建設業とは。
街中の住宅の建築現場で、大工さんや左官屋さんが働いているのを見かけます。また、都心部ではクレーンを使った巨大デパートの改装も行なわれています。一人で作業を行なっている大工さんからいわゆるゼネコンと呼ばれる総合建設業に至るまで、それらはすべて建設業です。建設業法でも、建設業とは元請、下請その他いかなる名義をもってするかを問わず建設工事の完成を請け負う営業をいうとし、建設業者とは建設業の許可を受けて建設業を営む者と定義しています。
2、建設業のなりたち
国の寺院造営など、労務請負や手間請負の歴史は古く、中世にも記録で残させています。戦国時代には築城や城下町構築で建設の需要が高まり、建設職人である棟梁や親方が仲間を率いてその普請に携わりました。江戸時代には、棟梁や親方が一括して建設物の完成を約束する「請負」が始まったとされます。町奉行が置かれ、道や石垣、下水道の敷設など公共事業なども行われます。現在、日本を代表する建設会社の多くも江戸時代に創業されました。
請負の制度が整備されたのが、明治時代です。民法で請負契約の概念が定着し、官公庁の工事に入札制度が導入されることになりました。ただし、現在の建設業は、第2次世界大戦後、建設省が発足・建設業法が公布されたことから始まったとされています。建設業法は建設工事の適正な施工を確保し発注者を保護することを目的としており、建築物の敷地・構造などを定めた建築基準法や技術者の免許資格を定めた建築士法とともに建設三法が施行され、建設業について各種の業務規制が法制化されました。
朝鮮戦争の特需景気から高度経済成長期にかけて、建設投資は飛躍的に拡大し、建設業は日本の基幹産業となりました。
3、「土木」と「建築」
建設業を大別すると、土木と建築になります。土木とは、道路・橋梁・ダム・トンネルなどの社会インフラを指し、建築は住宅・ビル・商業施設など箱物建築物を指します。
土木や建築といった言葉も一般的に使われるようになったのは、明治時代以降で、建築学会や土木学会などが設立されてからであるとされます。
土木工事・建築工事を一括して請け負うゼネコンを元請として、下請として工事の一部を請け負う建設会社があり、その下には、内装工事や塗装工事、とび土工工事など専門工事を請け負う建設会社があるという、元請・下請・孫請という重層構造になっているのが建設業の顕著な特徴です。
(文責)行政書士 谷口 恵子