「商標の登録要件(その2)」
今回は、商標登録を受けるための要件のうち、商標の識別力について説明します。
「話題」
1.買収防衛策を抑制する経産省指針~経営者は株主へ明確な説明が必要
2.タンス株”はいまだ約130億株~株券電子化開始前に名義の確認を

商標の登録要件(その2)
1.はじめに
今回は、商標登録を受けるための要件のうち、商標の識別力について説明します(商標法第3条第1項各号)。これ以外の登録要件には、前回、説明しました商標の使用意思があり(第3条1項柱書)、公益または私益保護のための不登録要件があります(4条1項各号)。
2.商標の識別力
(1)商標は、自分の商品または役務(;いわゆるサービスのことです。)の識別標識であり、使用することにより商標が識別機能を発揮し、商標を使用する者の業務上の信用が商標に蓄積し、この業務上の信用を商標法では保護しています。したがって、商標登録要件(商標登録を受けるための要件)として、商標の識別力が要求されます。
(2)具体的には、つぎの商標は識別力がないという理由で出願が拒絶されます。
a.商品又は役務の普通名称を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標(第3条第1項第1号)。普通名称には、略称や俗称が含まれ、ローマ字やカナ文字で表示した商標も含みます。
例;商品「サニーレタス」について商標「サニーレタス」、商品「ポケットベル」について商標「ポケベル」、役務「靴の修理」について商標「靴修理」
b.商品又は役務について慣用されている商標(第2号)。
例;商品「清酒」について商標「正宗」や「男山」、役務「宿泊施設の提供」について「観光ホテル」
c.商品の産地、販売地、品質等の表示又は役務の提供の場所、質等の表示のみからなる商標(第3号)
。普通の方法で表示する場合に適用されます。
例;商品の産地:商品「ワイン」について商標「フランス」
商品の販売地:商品「洋服」について商標「東京銀座」
商品の品質:商品「清酒」について商標「吟醸」
商品の原材料:商品「洋服」について商標「シルク」や「ウール」
商品の効能:商品「入浴剤」について商標「疲労回復」
商品の数量:商品「鉛筆」について商標「1ダース」
商品の形状:商品「自動車」について商標「自動車と認識させる立体的形状」
商品の生産の方法:商品「コーヒー」につい商標「炭焼き」
役務の提供の場所:役務「飲食物の提供」について商標「札幌ススキノ」
役務の質:役務「預金の受入れ」について商標「定期」や「普通」
役務の用途:役務「衣服の貸与」について商標「婚礼」や「葬祭」
役務の態様:役務「飲食物の提供」について商標「セルフサービス」
役務の提供の方法:役務「バスによる輸送」について「貸し切り」
d.ありふれた氏又は名称を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標(第4号)。ローマ字やカナ文字で表示した商標も含みます。また、ありふれた氏等に「株式会社」、「商店」、「製作所」等を付加した商標も含みます。
例;「鈴木」、「YAMADA」、「佐藤商会」
e.極めて簡単で、かつ、ありふれた標章のみからなる商標(第5号)。
例;カナ文字1字、ローマ字1字又は2字、数字、一本の直線、円等の図形
f.需要者が、何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができない商標(第6号)。
例;地模様のみからなる商標、商標「習う楽しさ教える喜び」のようなキャッチフレーズ、
商標「平成」(:現在の元号)、商標「NET」(:商慣習上、数量を表示する文字)
さらに詳細をお知りになりたい方は、ご連絡下さい。
(文責)弁理士 川瀬 裕之
話題1.「買収防衛策を抑制する経産省指針~経営者は株主へ明確な説明が必要」
今年3月期決算企業の提示株主総会は6月末でヤマを越えたが、「敵対的買収防衛策」のための「定款変更総会」と言われるくらい導入議案を盛り込んだ企業が続出した。6月総会で213社、そのうち74社が定款変更する特別決議案を諮った。特別決議案には出席株主の3分の2以上の賛成が必要と、ハードルが高い。残る139社は株主の過半数でよい普通決議案を提出したとみられる。
買収防衛策の大半は、事前警告型と呼ばれるタイプ。買収者に対してその目的や経営戦略などの説明を求め、買収提案を評価する。問題は発動要件の中身で、経営陣に都合よく解釈できる内容も多く、発動乱発を懸念する声が多い。
最近は発動の可否を株主総会で問う株主判断型も増えた。食品会社の防衛策発動を認めた司法判断が追い風となって、株主の判断を仰いだ方が法的な安定性が増す、との考え方である。
しかし、6月上旬に経産省が発動要件を厳しくする立場を改めて打ち出した「『企業価値研究会』報告書」では、買収者への対価としての金銭処理を歓迎しない見解が述べられている。外国人らによる対日投資を鈍らせる投資機会の排除を懸念していることが理由。買収を止めさせるのではなく一時停止し、双方が企業成長への議論の場と時間を十分に作ることを目指す。経営者は、防衛策導入について株主への明確な説明を求められることが不可避になるであろうと思われる。
話題2.「"タンス株”はいまだ約130億株~株券電子化開始前に名義の確認を」
上場会社等の株式に係る株券は2009年1月からすべて電子化される。株券電子化は、上場会社の株式等に係る株券をすべて廃止し、株券の存在を前提とした株主権の管理を、証券保管振替機構および証券会社等の金融機関に開設された口座において電子的に行おうとするもの。
証券保管振替機構がこのほど発表した「保管振替制度の利用状況に関する調査」結果によると、個人投資家が自宅や金庫で保管しているいわゆる“タンス株”が今年3月末時点で約130億株にのぼることが明らかになった。
株券電子化が実施されると株券は無効となり、タンス株は、株主名簿上の名義で、発行会社が開設する「特別口座」で管理される。株券を所有者本人の名義に書き換えておかないと、本人以外の名義の特別口座で管理される。特別口座で管理される株式の名義を本人名義に書き換えておかないと、名義上の株主が勝手に株式を売却してしまうなど、株主としての権利を失うおそれもある。
今年3月末現在、上場企業の株式総数3,802億株のうち3,177億株が振替機構に預け入れられているが、預託されていない625億株のうち、法人が独自に保管している分などを除いた個人のタンス株は約130億株にのぼる。
証券業界では、タンス株所有者に対し、できるだけ早めに、株券の名義を確認・書換手続きをして、証券会社等を通じて振替機構に預託することを勧めている。
(文責)ネットファーム事務局 山本 正